ぼっち理系大学生のブログ

ぼっち理系大学生です。泣

「ブランノワール」僕の処女作です。初めて物語を書いてみました。

「例によって例のごとし」ということわざをご存じであろうか。
 
この言葉の意味は目新しいことがなくいつも通りであるということであるが
この考え方は今の日本人に根付いている。
例えばどこかで事件が起こったとしても
根拠なく「自分は大丈夫だ」と考える人は一定数存在する。
最近話題のコロナウイルスにしてもそうだ。
日本でもアメリカやイタリアのように大流行する恐れは非常に高いのにもかかわらず
 
「自分は大丈夫」
という根拠のない地震からいまだに飲みに行ったり遊びに行ったりする人が後を絶たない。
このようにどこか日本人は他人事に考えてしまう癖がある。
勿論、僕も例外ではなくそうだった。
あの時までは・・・

「悟ー!早く起きないと遅刻するわよ!」
まただ、また聞きたくない声が聞こえる。
いつもこうだ、母親は心配性でいつも準備を始めるのが早いのだ。
そのせいで僕も妹の美優もいつも過度に早い時間にに起こされてしまう。
いつも通り今日も普段家を出る時間の2時間前に起こされた。
効きなじみのある声に眠りを妨げられ、苛立ちを覚えながらも
 
「わかってるよ!今行く、今行く!」
と僕はけだるそうに返事をして声のするほうへと向かった。
リビングに着くとすでに美優はご飯を終えていたらしく
まったりとしながらテレビを見ていた。
ここで僕はふとあることを思い出した。
そういえば昨日夜中に一階から物音がしたのだ。
おそらく美優お得意の夜食だろうと思い
 
「美優、昨日夜遅くまで起きてただろ、あんまり夜更かしは良くないぞ」
と姑のようにねちねちと説教すると
 
「へいへーい」
というナ〇トのシカ〇ルを彷彿とさせるやる気のない返事を返してきやがった。
(・・・こやつめ、やりおるわい)
僕は心中穏やかではないものの、椅子に座り食事をとり始めた。
 
そういえば明日は美優の誕生日だ。
誕生日と言えばうちの家族ではそれぞれ1人1つずつプレゼントを渡すルールがあり
あいにくにも僕はシスコンなので新作のゲーム機twith(トゥウィッチ)は予約済みで
今日の学校帰りに取りに行く予定なのだ。
そんなことを考えながらテレビをぼーっと見ているとそろそろ家を出る時間になった。
そして僕は美優と一緒にいつも通り学校へと向かった。
いつも通り、変わらない日常。
こんな日常が僕にとっては何よりも大切なものであり
妹の美優こそが一番の宝物であった
 
そしていつも通り授業が終わりいつもは美優と一緒に帰っているが
今日はプレゼントを受け取りに行かなくてはならないため先に帰ってもらった。
そして予約していた商品を受け取りに行き
無事twithを手に入れた僕は妹の喜ぶ顔が想像できてつい頬が緩んでしまう。
このあたり本当のシスコンなんだなぁと改めて実感させられる。
 
でもいつかは
(「キモいから話しかけないで」とか言われるんだろうなぁ)
そんなことを考えながら家へと足を進めた。
この日はやけに暑い日だった。
家に着くとなぜか扉が開いている。
いつもならば防犯のためにいちいちカギを閉めているのだが
今日は開けっ放しだった。
だがこの時の僕は早くプレゼントを渡したい一心だったので
特に気にもかけずに家の中に入った。
 
「・・・・え?」
 
家の中に入ると赤い液体が飛び散っていた。
・・・絵具だよな?誕生日の演出?
心臓をバクバクさせながらリビングの扉を開けると
母親が血だらけで横たわっている。
 
「!!!!かあさあああああん!!!!」
 
僕は狂ったように叫びながら母親のもとに駆け寄った。
そして周りに目をやると
 
「・・・!!」
 
首が転がっていた。
親父の首が転がっていたのだ。
頭が真っ白になりそうだった。
一体何が起こったのだ?
どうしてこんなことが?
考えても考えても答えがわいてこない。
そしてここで僕は気が付く。
 
(・・・美優は?)
美優だけは失ってはダメだ。
彼女だけは生きていてくれ。
頼む神様この命に代えてもいい美優だけは無事であってくれ。
そう願いながら無我夢中でで美優の部屋へと向かった。
しかしそこには美優の姿はなく代わりに知らない女の子が血だらけのナイフを持って座っている。
「・・お前がやったのか?っ!!!お前がやったのか!?!?!?」
僕は怒りで我を失いながら狂ったように叫んだ。
女の子は何も答えない。
とっさに僕は部屋にあった彫刻刀をもって女の子に襲い掛かろうとしたその時
僕は突然意識を失ってしまった。

目を覚ますと見慣れない風景が広がっていた。
どうやら病院にいるらしい。
そして隣にいた警察官がこういった。
「悟くん。心して聞いてくれ。君の両親は亡くなったよ。発見した時には手遅れだった。」
僕は耳を疑った、信じられなかった。だが信じるしかなかった。
さらに警察は説明する。
「犯人は君が襲おうとしていた女の子だ。彼女はまだ未成年であるため今は少年院に送られている。
そして彼女の両親は責任を逃れるためか行方をくらませてしまった。本当にすまない。」
そんなことはどうでもいい!もっと大事なことがあるだろ!そう思って僕は咄嗟に疑問を投げかけた。
「・・妹は、妹の美優は無事なんですか!?どうなんですか!?」
頼む、頼むから無事であってくれ。何事もなくまた以前のようにお兄ちゃんと呼んでくれ。
そう願いながら返答を待った。
すると警察官の口からは予想だにしなかった返答が返ってきた。
「・・妹?君は一人っ子だ。いいかい、現実を受け止めるんだ。辛いことかもしれないが受け入れるしかない。」
僕の頭は真っ白になった。
妹は?美優は存在しなかったのか?
いやそんなはずはない。
確かに美優は僕の妹だ。
たった一人のかけがえのない宝物だ。
「僕には妹がいます!!美優という妹が!!」
「すまない、私が君を容疑者と勘違いして撃ってしまったため記憶障害が出ているのかもしれない。本当に済まない。」
いくら訴えかけても警察官は信じてくれない。
しまいには証拠として戸籍情報を見せられたが、そこに美優の名はなかった。
本当に美優は存在しない・・?
全部僕の空想だった?
そう考えた刹那、僕の中で何かが壊れる音がした。
そして僕の世界から色が失われた。